発売決定!
☆ライフ オン ザ ロングボード☆
映画で公開されたときに、絶対見に行く!と決めていたのに、すぐに公開終了・・・となり見に行くことが出来なかったのでず~~~~と待っていたDVDです。
株式会社マルカネフーズ経理部長代理・米倉一雄は、今日定年を迎えた。
一雄は、特別会社を好きなわけではなかったが、嫌いでもなかった。ただ人生の一ページが終わった、そんな淡い感慨だけだった。
三年前には妻を病気で亡くし、上の娘の瞳は結婚し家を出て今は下の優を残すばかり。そんな優も彼氏とどこかに出かけたようだ。がらんとした家の中で、たった一人亡き妻の遺影に向かって手を合わせる。
「終わったよ…・・」
ある日一雄は、鎌倉の実家の父・雄蔵を尋ねる。退職した報告をするが、雄蔵は雄蔵で自分の最期の過ごし方と向き合っていた。鎌倉の海沿いの道をひとり散歩する一雄。
亡き妻・日出子との思い出にふける。ここは闘病中の妻を引き連れて訪れた思い出の場所だった。
「種子島に一緒にサーフィンしに行こうって約東したの覚えてる?」
学生時代からの付き合いだった妻のそんな言葉を思い出した。
一雄にも青春時代はあった。ジェリー・口ペスに憧れてロングボードに夢中になった日々。実家に戻って物置の中を探し回ると、ビンテージのロングボードがそこに眠っていた。昔のサーフマガジンをめくると、種子島の記事が…。早々に子供ができた二人は仕事に明け暮れ、ろくに旅行にも行けない日々。止まっていた時間が動き出した。妻に種子島の海を見せたい…。皮肉な事に時間だけは余りあるほどあるのだ。
優の反対をよそに、日出子の位牌とロングボードを手に、単身種子島へと旅立つ一雄。
優は一雄を怨んでいた。三年前、仕事のせいで日出子の最期を看取ることができなかったからだ。ましてその仕事が終わると、今度は娘の就職を控えた大事な時期に南の島に出かけてくると言うのだ。
「勝手にすれば、私は私で好きにやるから」
「お前は・・・お前の好きなことをしなさい」
「・・・」
心の底ではわかっていた。母が亡くなって誰よりも辛いのは父なのだ。でも、多くを語らない父の態度が許せなかった。
念願の鉄浜海岸に立ち感動を覚える一雄。だが、運動不足の50過ぎのおっさんが、いきなりサーフィンなんてできるはずもな<、ただ立ち媒むだけ。
ローカルサーファーたちのメッカ、「ORlGlN」を訪れる一雄。オーナーの銀次やその仲間の憲太たちにサーフィンの手ほどきをお願いするが、当然相手にもされない。それでも一雄はあきらめず、銀次に自分の思いを語る。民宿も経営する銀次は、戸惑いながらも、「しばらくウチヘ泊まれよ」と受け入れてくれたのだった。
銀次の民宿・美香荘に泊り込んで、サーフィンに明け暮れる日々。といっても、波に向かってはひっくり返りの繰り返しだった。それでもめげず、笑われながらも・何度も何度も笑顔で波にチャレンジする一雄。そんな姿を見て、ローカルサーファーたちも次第に一雄と打ち解けるようになっていった。
次第に『スローライフ』を楽しみつつある一雄。一方の東京では、就職活動という現実に追われ、自分のやりたい事をいまだ見出せない優の姿があった。いくつもの会社の面接を受けるが、ただ惰性で受けるだけで、何も見つけることができない。母の病気からも、会社からも逃げていた父と自分がどう違うというのだろうか?私も自分から逃げているの?自問自答の毎日が続く。そんな時、一雄からの手紙が届いた。遠く離れた種子島で、一雄が伸び伸びと生活する姿が目に浮かんでくるのだった。思いがけず笑顔でそれを読んでいる自分がいた。
瓢々と生きていると思われた銀次も、それなりに問題を抱えていた。銀次の妻、喜子は、精神をわずらっていた。喜子の母・カヨ姿からの話を聞く一雄。昔のこと。島を出て働いていた頃のこと。せっかくできた子供も流産させてしまったこと。そんな過去の苦い思いを、いまだにどこかで引きずっている。それでも手を取り合って夕陽の中を一緒に歩いている。そんな二人の姿を見て、一雄は亡き妻・日出子の思い出を重ねあわせる…。
種子島の近くを台風が通過するせいで今年一番の波がやってきた。サーファーたちは、息巻いて海に向かう。当然、銀次や憲太、そして一雄も店そっちのけで鉄浜海岸に向かう。
すると、信じられない光景が…娘の優が種子島にいるのだ。すっかり変わって垢抜けた父の姿をみて、戸惑う優だが、一雄とともに海に向かう。
鉄浜に集うサーファーたち。ローカルの若者も織り交じって、うねる波を眺めている。次々と波に向かっていくサーファーたち。
この日は台風シーズンの中でも、最も高い波に送られる称号「ドラゴン・ロック」と呼ばれる大波になった。
憲太が波にチャレンジする!が…巨大な波にのまれて溺れてしまう。
病院に担ぎ込まれた憲太は意識がなく、危険な状態だったが、皆の懸命な呼びかけで、何とか目を覚ました。
優も島の雰囲気に慣れてきた。ゆったりと過ぎ行く島の時間の中で、一雄と優の疲れが癒えてゆく。妻の死、人生のリタイアという現実に向きあうことで、一雄はしっかりと、第2の人生「スローライフ」を見つけることができた。優もそんな父の姿、島の人々の姿を感じとって、「自分」を見つめ直す。
ある日、銀次は一雄に言った。
「種子島は昔も現在も、色んなもんを受け入れてきた…。
南蛮人も鉄砲も、そしてあんたも…流れつくものは全部受け入れてやる。そういう島だ…」
一雄は島の人々の思いやりに涙した。こんな時、いつだって日出子の顔が浮かぶ。いつだって自分を思ってくれた、かけがえのない人。
一雄はあの日、病院にいた。日出子がこの世から去った日のことである。毎日のように面会に行っていた一雄は死期が近いことを知らされていた。だからこそ、最期の日だけは、病室には行けなかった。愛する人がこの世からいなくなることに耐えられなかったのだ。胸が張り裂ける思いに耐えられる自信がなかったのだ…。
一雄と優は海岸で夕陽を見つめていた。。
「もう…逃げたくない」
優は返す言葉が見つからない。
二人はただ黙って時間を埋めた。
月日は流れ、種子島に再び大波がやってきた。今度も憲太や若いサーファーたちが波に向かっていく。そして一雄も波に向かっていった。サーフィンはそんなに甘くない。何事も練習した分だけ上手くなる。サーフィンも同じだった。無謀なのは誰もがわかっていた。だが、彼はビッグウェーブに向かっていった。
「もう逃げない」をスローガンに一・・。
東京に帰った優は、父と同じ食品会社に就職した。
種子島ではあいかわらず、一雄や銀次やその仲間たちがサーフィンをしている。
そして、東京でも種子島でも、様々な風景が流れて行く・・・。
優が今年も種子島に向かう準備をしている。
島では真っ黒に日焼けしてアロハシャツを着込み、ロングボードを抱えた一雄が、今日も仲間たちと海に向かう…。